アメリカの大学の新年度は9月から始まります。日本の高校を3月に卒業したら、その年の9月からアメリカの大学生活をスタートさせることができます。では、学期や年間スケジュールはどうなっているのでしょうか。学生の1日のスケジュールは?
それぞれの大まかな流れを知って、留学前の参考にしましょう。
もくじ
アメリカの大学の年間スケジュール
アカデミックイヤー
アメリカの大学は、9月~翌年5月までの約9か月間を1学年度としています。この1学年度のことを「アカデミックイヤー」(Academic Year)といいます。多くの大学では、アカデミックイヤーを、
- 9月~12月の秋学期
- 1月~5月の春学期
という2つの時期に分けた、二学期制(セメスター制)をしいています。大学によっては三学期制のところや、四学期制のところもあります。四学期制の大学は、カリフォルニア州に多く見られます。
アカデミックカレンダーの例
アメリカの大学のアカデミックイヤーのスケジュール(アカデミックカレンダー)の例を見てみましょう。
秋学期 |
9月8日 9月9~11日 9月11日 9月12日 9月19日 10月12~14日 10月15~18日 11月14~17日 11月23~27日 12月16日 12月17~18日 12月19~21日 |
新入生到着日 オリエンテーション 科目登録 授業開始 Add & Drop 最終日 中間テスト 秋休み 春学期の科目登録 感謝祭休暇 授業最終日 自習日 期末テスト |
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12月22~1月21日 | 冬休み | |
春学期 |
1月22日 1月23日 1月30日 3月7~9日 3月10~19日 4月3~5日 5月2日 5月3~4日 5月5~8日 5月13日 |
帰寮日 授業開始 Add & Drop 最終日 中間テスト 春休み 秋学期の科目登録 授業最終日 自習日 期末テスト 卒業式 |
オリエンテーションから授業開始まで
大学ごとに入寮日が決まっているので、その日に大学に到着するようにします。たいていその翌日からオリエンテーションが行われます。オリエンテーションは日本の大学のガイダンスに相当するもので、大学生活全般について、重要事項を学びます。
このオリエンテーションで、キャンパスの施設の使いかたや寮のルール、科目登録の方法などの説明を受けます。とくに留学生を対象としたオリエンテーションの場を設けている大学も少なくありません。またこのオリエンテーションの一環として、プレイスメント・テスト(英語や数学などの科目登録のためのレベルを測るテスト)が行われることもあります(最近は渡米前にオンラインで実施されることも多いです)。その他、「多様性」や「ジェンダー」、「ハラスメント」といったテーマごとのワークショップやレクリエーションが実施されることもよくあります。新入生同士の交流イベントもあったりして、盛りだくさんの内容です。
科目の登録は、アカデミック・アドバイザー(履修登録のアドバイスをしてくれたり、学生の成績に気を配ったりして、落ちこぼれないように指導してくれる先生)と相談して行います。アカデミック・アドバイザーは、学業だけでなく生活全般についてアドバイスをしてくれる、とても頼れる存在です。科目登録の手続そのものは、オンラインで行うのが一般的です。
最初の授業で配布されるシラバス
科目登録が終わるとすぐに授業が始まります。最初の授業では、「シラバス(Syllabus)」という授業進行表が配られます。このシラバスには、
- 科目の目的と内容
- 授業のスケジュール
- 担当教員のオフィスの所在とオフィスアワー*
- 教科書と参考図書
- 成績のつけかた
- テストの回数と内容
- 宿題・課題
- ペーパー(レポート)の内容・長さ・提出期限
- 出席についての規定
などが記されています。授業はこのシラバスに沿って進められるので、学期の終わりまで何度も参照することになります。
- * オフィスアワー: 教授室で教授が学生の質問や相談に応じてくれる時間。この時間であれば、アポなしで教授に会うことができます。授業内容の質問だけでなく、ペーパー(レポート)のアドバイスをもらったり、予習のポイントを聞くこともできます。留学生はこのオフィスアワーを頻繁に活用することになります。
授業が始まって最初の数日~2週間くらいまでは、履修科目の変更ができます。履修をとりやめることを Drop、科目を加えることを Addというため、科目の変更ができる期間を “Drop & Add Period” といいます。
中間・期末テスト
授業が始まって7~8週目(10月半ば~下旬)に、中間テスト(Mid-term Examination)があります。それまでに学習した内容が盛り込まれたテストで、学期末に行われる期末テストと同様に、結果が成績に大きく響きます。
初めての中間テストでは、多くの留学生が、慣れないこともあって、あまりいいスコアを出せません。そこで落ち込むのではなく、やる気があることを示し、努力する姿勢を保ち続けることが、評価につながります。どうしても辛い場合は、担当の先生やアカデミック・アドバイザーにすぐに相談しましょう。アメリカの大学は学生に対する学業サポートを惜しみません。チューター(上級生による個別指導)のシステムもしっかり整えていますので、きっと打開策が見つかるはずです。
学期末には期末テスト(Final Examination)が待ちかまえています。学生たちは期末テストのことを “Final” といいます。ちょっと緊張した響きがある言葉です。中間テストよりも、その結果が成績に反映される割合が大きいのが一般的です。つまり中間テストの結果を挽回するチャンスでもあります。
春学期とサマースクール
春学期は、基本的には秋学期の繰り返しです。それぞれの学期は独立しているため、履修する科目も秋学期と春学期とでは異なりますが、やはり中間テストと期末テストがあって、勉強に追われる日々を送ることになります。
春学期の期末テストが終わると夏休みです。だいたい5月の中・下旬から8月いっぱいにかけて、3か月以上の長い休みになります。この期間は、日本に帰国する留学生がたくさんいますが、サマースクール(夏期集中講義)をとる留学生も少なくありません。
サマースクールは、秋学期や春学期に開講されているのと同様の科目を、4週間とか6週間の短い期間に集中して学ぶものです。修了すれば単位を取得できます。サマースクールをとるのは任意ですが、これを利用して単位を稼ごうという学生はたくさんいます。サマースクールを活用すれば、卒業までの期間を短縮できます。
またサマースクールは、別の大学でも科目を受講できるというメリットがあります。ハーバードなどの名門大学でも、サマースクールに限っては広く門戸を開けて、学生を迎え入れています。そして別の大学で受講したサマースクールであっても、自分の大学の卒業単位になります。異なる大学のキャンパスライフを経験し、新しい友だちをつくり、また単位も取得するといった、さまざまな魅力がサマースクールにはあります。
アメリカの学生の1日
アメリカの大学生はどのようなキャンパスライフを過ごしているのでしょうか。ある留学生の、典型的な1日を覗いてみましょう。
アメリカの大学生の典型的な1日は?
7:00 起床 |
寮のあちこちの部屋で目覚まし時計の音が鳴ります。だれも起こしてくれません。自力で起き上がります。 |
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7:00~7:30 身支度、シャワー |
朝にシャワーを浴びるのがアメリカでは一般的。湯船にはつかりません。 |
7:30 朝食 |
寮とは別の建物にあるカフェテリア(食堂)で朝食をとります。だいたいトーストかベーグルと卵、ベーコンといったかわりばえのしないメニューです。 |
8:00~8:50 授業(スペイン語) |
小テスト(Quiz)に始まって、新しい文法と会話を習います。アメリカ人学生も初心者ばかりですので、留学生でもついていきやすい科目です。 |
9:00~9:50 授業(心理学) |
抜き打ちの小テスト(Pop Quiz)が行われます。問題は口頭で述べられるので、けっこうたいへんです。 |
10:00~12:00 フリー |
授業のない空き時間は、午後の授業の予習をしたり、メール・SNSのやりとりやインターネットで調べものをしたり、ルームメイトとおしゃべりしたりして過ごします。 |
12:00 昼食 |
ルームメイトと連れ立ってカフェテリアで昼食です。サンドイッチとスープが定番。 |
13:00~13:50 授業(生物学) |
ビデオを見て理論を学びます。 |
14:00~15:30 実験(生物学) |
授業で学んだ理論をもとに実験を行います。実験結果はすぐにPCに入力して、データを分析します。 |
16:00~17:30 部活(サッカー) |
アメリカはサッカーはあまりポピュラーではないので、日本人留学生でも活躍できます。スポーツを通じて友だちも増えます。 |
18:00 夕食 |
やはりカフェテリアでとります。朝・昼・夕すべて食べ放題なので、食べ過ぎには注意。 |
19:00~21:00 フリー |
部屋でルームメイトとインターネットで映画鑑賞。20時にはジムに行ってワークアウトです。体を動かすのはストレス発散にもなります。 |
21:00~23:00 勉強 |
図書館で宿題や明日の授業の予習。部屋でするよりも集中できます。もちろんネット環境も整っています。 |
24:00 就寝 |
このように、アメリカの大学生活は、寮と教室と図書館と食堂を行き来することに明け暮れます。この日が特別なわけではありません。授業が終わったら街に出てカラオケに行くとか、夕方はコンビニでアルバイトということはありません。きわめて単調かつシンプルな生活です。こういう日々を、いかに楽しく過ごすか、留学生ならではの工夫が求められます。
生活が単調であるだけ、落ち着いて勉強に励めるともいえますが、都会的刺激に慣れている日本人留学生にとっては、このシンプルな生活に慣れるまでがたいへんです。授業時間が少ないようにも感じますが、宿題がたっぷり出るので、勉強に追われる日々を送ることになります。
※ 大学の授業や予習、宿題・レポートとその乗り切りかたについては「アメリカの大学の学業生活」を参考にしてください。具体的な留学生の様子は、留学体験記「ブラウン大学の日常。寮生活から勉強、週末の過ごしかたまで」(2021.3.13)などをご覧ください。
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