アメリカの大学では、科目を履修して「単位」を取得することになります。この「単位」とは何を指すのでしょうか。また「成績」の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
このページでは、アメリカの大学の「単位」「学期」「成績」について解説します。アメリカの大学に「卒業をめざして留学」することを志している人は、留学する「前」に、これらの仕組みをしっかり理解しておきましょう。
もくじ
[ 1 ] アメリカの大学の「単位」と「学期」
1.科目の履修=単位の取得
2.秋学期と春学期のセメスター制
3.1単位=1週間に1時間の授業
4.科目のレベル
5.科目の種類ごとに必要な単位数
[ 2 ] アメリカの大学の成績
1.成績の仕組み
2.卒業に必要な単位と成績
アメリカの大学の「単位」と「学期」
科目の履修=単位の取得
アメリカの大学は「単位制」です。履修科目ごとに、その科目に割り当てられた単位(Credit)を取得します。1科目につき得られる単位は3単位とか4単位というのが一般的です。そうして卒業に必要な単位を積み上げていくことになります。
四年制大学の卒業単位は 120 から 130 単位。学年も取得単位数で決まります。取得単位と学年の関係はおおよそ以下の通りです。
- 1年生(Freshman):0~29単位
- 2年生(Sophomore):30~59単位
- 3年生(Junior):60~89単位
- 4年生(Senior):90単位以上
1 年に 30 単位ずつ取得していけば、ちょうど 4 年で卒業できることになります。セメスター制(二学期制)の大学なら 1 学期につき平均して 15 単位をとれば、4 年で卒業です。これが一般的な単位取得のペースということになります。ただ、サマースクール(夏期集中講義)を活用するなどして単位取得のペースを早めれば、3 年半で卒業するのも無理なことではありません。
またアメリカでは、別の大学に「編入(transfer)」する際に、それまでに取得した単位を編入先の大学に移行することも可能です。
アメリカの大学は、日本の大学(放送大学などの通信制の大学も含めて)の単位も認めてくれるので、この単位制を利用して「編入留学」をする人も増えています。およそ60単位(卒業単位の半分)までは、単位を移行できます。
秋学期と春学期のセメスター制
アメリカの大学は、9 月から翌年 5 月までの 9 か月間を 1 年度としています。この 1 年度のことを「アカデミックイヤー(Academic Year)」といいます。多くの大学は、アカデミックイヤーを
- 9 月から 12 月までの秋学期(Fall Semester)
- 1 月から 5 月までの春学期(Spring Semester)
これら 2 つの学期で分けるセメスター(Semester)制をとっています。それぞれの学期の長さは 15 ~ 16 週間です。
セメスター制の大きな特徴は、秋学期と春学期がそれぞれに独立していること。秋学期の科目は、学期の半ばごろに中間テストを受け、12 月に期末テストを受けてペーパー(レポート)を提出、成績がついて単位を取得し、それで完結。春学期にはまた別の科目をとって、中間・期末テストを受けペーパーを提出し、単位を得ます。ほぼ 8 週間ごとに大きなテストがあるというペースです。
入学時期も 9 月と 1 月の、年に 2 回あります。とはいえアメリカの高校の卒業時期が 5 月末~ 6 月なので、9 月(秋学期)に入学するのが主流です。卒業もやはり、5 月と 12 月の年に 2 回のチャンスがありますが、アメリカで「卒業シーズン」といえば 5 月です。日本から留学する場合は、3 月に日本の高校を卒業して、その年の 9 月にアメリカの大学に入学するのが最短ですが、翌年の 1 月に入学する人もたくさんいます。
アメリカの大学の学期制には、このセメスター制のほかに、1 年を 4 つに区切るクォーター制(カリフォルニア州の大学に多くあります)や、わずかながら 3 学期に分けるトライメスター制などもあります。
単位 = 学習時間
アメリカの大学の科目は、1 科目につき 3 単位を得られるというものが多いのですが、その場合、授業時間は 1 週間に 3 時間になります。そして毎回の授業には、「その 2 倍の時間の予習」が必要とされています。つまり「単位」とは、授業と予習を合わせた「学習時間」のことをいうわけです。
時間割でいえば、「月・水・金曜日 10:00 ~ 10:50」とか「火・木曜日 13:00 ~ 14:30」とかが授業時間です。実験科目や実習、インターンシップなどにはこの規則は当てはまりませんが、ほとんどの大学では、単位に対する授業時間をこういったシステムで定めています。
1 学期に 15 単位をとりたければ、1 週間の授業時間は 15 時間(科目数でいうと 5 科目)。それに 2 倍、つまり 30 時間の予習が必要になるわけですから、1 週間で 45 時間の学習が求められるということです(留学生の場合はそれ以上の時間がかかるでしょう)。十分にたいへんな勉強量です。
1 年生のときにとる科目は、たとえば次のような感じになります。
1年生の科目と単位の取得例
9〜12月(Fall Semester) | 1〜5月(Spring Semester) | ||
---|---|---|---|
科目 | 単位数 | 科目 | 単位数 |
Freshman English | 3 | College Algebra | 3 |
Biology | 3 | Chemistry | 3 |
American History I | 3 | American History II | 3 |
Economics | 3 | Business Administration | 3 |
Spanish I | 3 | Spanish II | 3 |
Tennis | 1 | - | - |
計 | 16単位 | 計 | 15単位 |
1年度の取得単位 | 31単位 |
科目のレベル
単位の数は、学習時間によって決まるので、その科目のレベル(難易度)とは関係がありません。「3 単位の文学の科目を修めた」ということなら、その学習時間はわかりますが、どの程度のレベルの科目なのかはわかりません。
そこでアメリカの大学では、それぞれの科目に 3 ケタもしくは 4 ケタの番号(Course Number)を付けておおまかなレベルを分類しています。つまりこの番号を見ればその科目のレベルがわかるようになっているのです。州や大学によって細かな違いはありますが、一般的には以下のようになっています。
000番台 | 初級レベルで、大学の単位としてはカウントされない科目 |
---|---|
100番台 | 初級レベルで、おもに 1 年生が学ぶ科目 |
200番台 | 初級レベルで、おもに 2 年生が学ぶ科目 |
300番台 | 上級レベルで、事前に修めておかなければならない科目(Prerequisite)が定められている、おもに 3 年生が学ぶ科目 |
400番台 | 上級レベルで、Prerequisiteが定められており、おもに大学 4 年生が学ぶが、大学院生が履修することもある科目(同じ科目であっても大学生には 400 番台の科目番号があてられ、大学院生には 500 番台の番号があてられることもあります) |
アメリカでは、初級レベルのことをよく「101」といいます。「XXのはじめの 1 歩」という意味で「XX 101」というのです。これはアメリカの大学で初級レベルの科目に対して 100 番台が振り分けられることに由来します。
順序としては、1、2 年生のときに 100 ~ 200 番台の科目をとり、3 年生以降に 300 ~ 400 番台の科目をとっていくのが普通です。300 ~ 400番台の科目には、「あらかじめ履修しておかなければならない科目(Prerequisite)」が設けられていることが多いので、基本的には 1 年次からとることはできません。
100 番台、200 番台の科目の多くは一般教養科目に分類され、300 番台、400 番台の科目は専攻科目に分類されます。つまり 1、2 年次に一般教養科目をとり、3 年生から専攻の科目をとっていく、という順序になります。
科目の種類ごとに必要な単位数
アメリカの大学を卒業するためには、それぞれの大学が定める必要単位数( 120 ~ 130 単位)を取得すればよいのですが、ただなんでも単位をとればよいというわけではありません。科目の種類ごとに、卒業に必要な単位数が決められています。
科目の種類は以下のようになっています。
- 一般教養科目
- 専攻科目
- 選択科目
一般教養科目は、専攻にかかわらず、その大学を卒業するためにすべての学生がとらなければならない科目です。たいてい 1、2 年次に履修します。科目番号でいうと 100 ~ 200 番台の科目です。
専攻科目は自分が専攻する分野の科目です。専攻科目のなかでも、必ずとらなければならない必修科目と、自由に選択できる選択科目とがあります。
選択科目は、自由に選んで履修する科目です。専攻と異なる学科の科目をとってもかまいません。
これらの科目を、それぞれに定められた単位数だけ履修することで、その大学を卒業できることになります。必要な単位の数は、大学や専攻によってまちまちで、卒業単位を 120 とする場合、
- 一般教養科目:30 ~ 50 単位
- 専攻科目:30 ~ 60 単位
- 選択科目:20 ~ 40 単位
というのがおおよその目安です。
リベラルアーツ・カレッジは、一般教養に力を入れているところが多いので、一般教養科目の必修単位数もそれだけ多くなりますが、専攻の必修の量はそれほど大きくありません。ですから 2 つの異なる分野を専攻すること(=ダブルメジャー)も、リベラルアーツ・カレッジではそれほど無理なくできます。
一方で芸術系の専門大学や工科系の大学では、一般教養科目の必修単位は少なく、代わりに専攻科目の割合が大きくなります。
アメリカの大学の成績
成績の仕組み
アメリカの大学の成績は、A、B、C、D、F の 5 段階でつけられます。このアルファベットそれぞれを 4、3、2、1、0 の数字に換算したものを Grade Point といい、その平均値を Grade Point Average 、略して GPA (ジーピーエー)といいます。
アメリカの大学ではこの GPA が非常に重視されます。大学院への進学や就職にも、GPA が大きくかかわってきます。
GPA の計算式は、
(履修した科目の Grade Point × その科目の単位数)の総計 ÷ 総取得単位数
です。たとえば、以下の科目と成績をとった場合の GPA は、(ポイントの総計 52 )÷ (総取得単位数 16 )で、3.25 ということになります。
科目 | 単位 | 成績 | ポイント |
---|---|---|---|
Freshman English | 3 | C | 2.0ポイント × 3単位 = 6.0 |
Biology | 3 | A | 4.0ポイント × 3単位 = 12.0 |
American History I | 3 | B | 3.0ポイント × 3単位 = 9.0 |
Economics | 3 | B | 3.0ポイント × 3単位 = 9.0 |
Spanish I | 3 | A | 4.0ポイント × 3単位 = 12.0 |
Tennis | 1 | A | 4.0ポイント × 1単位 = 4.0 |
52ポイント ÷ 16単位 = 3.25
アメリカの大学では、2 学期続けて C 平均 = GPA 2.0を割ると退学になります。成績に対しては非常にシビアに考えるのがアメリカの大学で、「アメリカの大学は卒業がむずかしい」といわれる大きな理由も、ここにあります。
将来、大学院への進学を考えているならば、最低でも GPA 3.0 (B平均)が必要になります。GPA が 3.8 以上であれば、優秀な成績を修めていると評価されるでしょう。
成績は、クラスでのディスカッションへの参加や小テスト、中間・期末テスト、ペーパー、プレゼンテーションの内容などにもとづいてつけられます。たとえば「中間・期末テストがそれぞれ 25 %、ペーパーが 30 %、小テストが 10 %、ディスカッション参加が 10 %」といった具合です。
>> 授業や宿題、ペーパー、テストについて詳しくは → アメリカの大学の学業生活
卒業に必要な単位と成績
アメリカの大学を卒業するための要件(Graduation Requirements)のうち、まず単位数についてまとめると、「一般教養科目・専攻科目・選択科目それぞれについて、定められた単位数を修めること」です。
また専攻科目の場合は、「科目番号 300 番台以上の科目を 4 科目以上とること」といった規定が設けられていることもあります。
そのほかの卒業要件としては、成績についての規定があります。どの大学でも、平均して C 平均以上の成績を修めることが求められます。専攻科目に限っては、B 以上の成績が求められる場合もあります。
また、卒業直前の 1 年間をその大学で学ばなければならないという決まりがあり、ほかに、卒業単位の半数以上をその大学で修めなければならないとする規定もあります。これらの規定のことを Residency Requirements といいます。
この Residency Requirements によると、卒業単位のうち半数は別の大学から単位を移行してもよいけれど、残りの半数はその大学でとらなければならないことになっています。アメリカの四年制大学の卒業単位は 120 ~ 130 単位ですので、日本の大学も含めた他大学から移行できる単位数の上限は、およそ 60 単位ということになります。
ここまで、アメリカの大学の学期制や単位の仕組みなどについてご説明しました。もっと知りたいというかたは、栄 陽子の留学書籍もあわせてご覧ください!