前川 幸一
Ashland University教育学部卒業、同大学院在学中
Master of Education(Educational Technology)
留学のきっかけ
私の留学は大学を卒業してからしばらくして実行に移されました。日本の大学時代は良い友人に恵まれ、楽しい学園生活のはずだったのですが、実は私は常に引っかかるものがあったのです。それは自分が当時いた学部(歴史学)が本当に自分が学びたいものであったのかということでした。
それに気づいたのは学部の3年生の時だったのですが、この時友達が何気なく言った「留学してみるのも良いんじゃない」、という一言が私が留学を決意するきっかけとなりました。その結果、両親の賛同と栄 陽子留学研究所のバックアップを得て、私のオハイオ州での留学生活は始まりました。
ちなみに私の専攻は教育学部で、こちらの大学では日本人をはじめとする東洋人では初めてだったこともあり、当初は本人も周り(学部側)もてんてこまいになっていました。それでは、私が教育学部でどのような経験を経てきたかをお話します。
教育学部の授業【講義編】
私はセカンドディグリー(Second Degree:第二学位)でしたので、いきなり専門課程の授業から取ることになりました。はじめはかなり不安だったのですが、それはわずか1週間で解消されました。
なぜなら教授に質問された時や教科書を読んでいる時に困っていると、近くにいるクラスメートがすぐに助けてくれたからです。例を挙げると、質問の内容を教えてくれたり、ノートを貸してくれたり、時間があるときには講義の内容を一から教えてもらったこともありました。また教授方も何かにつけていろいろとサポートをしてくれたのです。その際によく言われたのが、「第2外国語で学ぼうとするあなたの苦労は、私たちには決して分らない。
だからもし困ったことがあれば、遠慮なく私やクラスメートに助けを求めなさい」ということでした。そのお陰で1年後には、講義に関してはあまり大変だなと思ったことはありませんでした。しかしその反面、私が何度となく大きな壁に当ったのが教育実習の方でした。
教育学部の授業【実習編】
私は日本でも教育実習を経験していますが、日本の場合約2週間(約48時間)しか実習の機会がありませんが、これがアメリカの場合になると最低300時間の実習を経なければ、卒業すらできません。ましてや特別学級専攻の私は、さらに多くの実習をこなさなければならず(普通学級専攻の学生より1〜2学期分多くなります)、この事実を知った時、私は唖然としたことを今でも覚えています。
そのうえいざ実習が始まると、ただでさえアガリ症の私は、よく失敗を重ねました。字の読み間違えなど当たり前、生徒の質問に答えられず授業を止めてしまったり、騒ぐ生徒たちを静かにさせられずに授業が混乱したりなど、もう大変なことになっていました。それでも最終的には、英語と算数の授業を教えることや生徒たちを授業内でしっかりとコントロールすることができるようになりました。
この経験が、私がアメリカで教師をめざす上での大きな自信になったのです。しかし、これはあくまで普通学級での段階で、それが特別学級になるとまた話が違ってくるのです。
アメリカの特別学級
アメリカの公立学校での特別学級は、基本的に二つの分野に分かれています。一つはDH児童(Developmental Handicaps: 知能の発達が遅れている児童)、もう一つはLD児童(Learning Disabilities: 知能のレベルは普通の児童と代わらないが、学習段階で問題のある児童)です。
私が彼らを教えるに当たって知識的には問題ないのですが、彼らは普通学級の生徒たちよりも物事の習得に時間がかかります。そのため彼らにはIEP(Individualized Education Program:個人のレベルに合わせた教育計画)という、それぞれの生徒たちが一日も早く普通学級に完全合流をめざすためのシステムが適用されます。
しかしながら、彼らは普通学級の児童より精神的に幼いケースがしばしば見られ、その結果、彼らは時には作業を無視し、そのことを注意するとすぐに泣き出したり、終いには暴れだし、毎日何らかのトラブルを起こしました。ただでさえ、自分の計画した授業内容通りに進まないことが多かったので、私は終業後に頭痛や胃痛にまで襲われたこともあり、このことが特別学級教員になる上での迷いに、しばしば繋がったのを覚えています。
しかしそれでも諦めずにいられたのは、私が絶対にこの道に進みたいという強い希望があったからです。その結果、私自身も自然に強くなり、子どもがどんな問題を起こしても、冷静に対処できるようになりました。そして実習をしていて何よりもうれしかったのが、生徒たちが少しずつとはいえ、着実に伸びていく姿を確認することができた時です。何物にも代えられない達成感を感じました。
あなたもアメリカでトップになれます!
最後に、言葉も環境も違う場所で勉強をすることは、たとえしっかりした目標があっても大変なことです。しかし、あなたの努力次第でアメリカの大学でクラスのトップになることも夢ではないのです。
私の場合、ある時生徒のテストの結果をまとめる宿題が出た時、本来ならテストの結果のみを出せば十分なのに、私はそれに生徒がどの問題を間違え、それに対しどのように対処をしていくかを結果の中に付け加えました。その結果、この課題でアメリカ人は皆BかCという結果だったのに、私はクラスでただ一人最高点のAを取ることができました。
つまりたとえ言葉にハンデがあっても、あなたのアイデアと努力次第では、いくらでもクラスのトップになれるチャンスはあるのです。こういった意味ではアメリカほど公平な国はありません。もしあなたも留学をする機会がありましたら、よい機会だと思っていろいろなことに挑戦してみてください。
その中にあなたがだれにも負けない才能を見いだせるかもしれません。がんばってください。