日本人がUCLAに留学できない2つの理由
(2021.1.27付記)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校、通称UCLAは日本人にとても人気の高い大学です。
そのUCLAに行くには、「まずカリフォルニア州のコミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)に入学して、そこを卒業してから3年生として編入するのがよい」というのが、多くの留学斡旋会社の弁です。
それを信じて、大学留学を志すたくさんの若者が、カリフォルニアのコミュニティ・カレッジに留学しています。
しかし、それで人生を台無しにしてしまう若者があとを絶ちません。
留学3年目でも編入できない
留学して1年目は何がなんだかわからずに過ぎてしまいます。
それが2年目・3年目になって、「どうやってUCLAに編入すればいいのかわからない」という相談が当研究所にたくさん来ます。
3年目なんて、もうコミュニティ・カレッジを卒業してUCLAに編入していなければならないのに、「ESL(外国人向けの英語の科目。卒業単位として認められない)をたくさんとっていて時間がかかった」などで、コミュニティ・カレッジを卒業するのに必要な単位を十分にとりきれていない例も少なくないのです。
また親御さんからは、「UCLAに編入できても経済的に厳しい」という相談がひきもきりません。UCLAの学費+寮・食費は年間65,000ドルもかかりますから、無理もありません。
科目選択を間違えると・・・
カリフォルニア州は、コミュニティ・カレッジから州立大学への編入システムがよく整っています。
あるコミュニティ・カレッジで履修している科目の単位が、編入先の大学でどのように認められるかがわかるassistというWEBサイトもあって、在学している大学と編入したい大学、専攻したい分野を選ぶと、いまの大学でとっておくべき科目が、ちゃんと出てきます。
そこで初めて、「エーッ」となることが多いのです。
在学中のコミュニティ・カレッジからは編入生を受け入れないということがあったり、その分野を専攻するためにとっておかなければならない科目がとても多かったりするのです。
UCLAに9月の新学期から編入するための出願期限は前年の11月です。
とても早いのです。
ですから1年生のときには、もう編入のための科目選びを始めなければなりません。
留学生がESLを必死でやっていては2・3年目になって慌てても到底間に合わないのです。
コミュニティ・カレッジからの編入のハードルの高さ
また、専攻したい分野も早くから決めておく必要があります。
たとえばUCLAで心理学を専攻しようという場合、別の分野からの専攻の変更は認められません。
コミュニティ・カレッジでは、心理学概論のほか、生物学、化学、哲学、そして統計学・数学・コンピュータのいずれかの科目をとっておく必要があります。
もちろん、大学により専攻により違いますが、カリフォルニアの各大学は、編入希望者にはなかなか厳しい要求をしています。
このようなことを、留学する前に知っている人はほとんどいません。
日本にある留学斡旋会社はこういう説明を一切しません。
現地のコミュニティ・カレッジでは、編入のための説明会なども開いているのですが、そのような説明会の存在そのものを知らない場合すら多いのです。
さらに、ほぼすべての授業で最高の成績(A評価)をとらないとUCLAに編入することがまずできないのです。
「お金」というもう1つのハードル
お父さんお母さんはひたすら金銭的なことが心配で、「もっと安くてキチンと寮があって編入可能な大学を教えてほしい」とおっしゃいます。
でも、カリフォルニアのコミュニティ・カレッジに留学しているお子さんたちは、まずホームステイ。
そして次は知り合った日本人同士でアパートをシェアしているというケースが圧倒的です。
ホームステイ→アパート生活→車を買う→ロスまで買い出しや食事に日本人同士ででかける、というパターンが繰り返されています。
生活にお金もどんどんかかります。
学生寮で生活すれば費用を抑えることがそれなりにできますが、カリフォルニア州のコミュニティ・カレッジは学生寮を用意していないところほとんどです。
さらに留学生自身がカリフォルニアの温暖な気候にどっぷり浸かって、それなりに青春しているのですから、窮屈な学生寮の生活など続くわけがないのです。
コミュニティ・カレッジのGPA(成績平均値。4.0が満点)が3.0以上(B平均以上)であれば、一般的なカリフォルニア州立大学(※)に編入することは可能です。
それでも年間40,000~50,000ドルくらいかかります。
どのキャンパスに行きたいのかを聞くと、たいてい「ロスに近い大学」と答えるのです。
ロスの生活費は東京よりも高いといわれているのですよ。
(※)カリフォルニア州立大学:California State Universityという州立大学のグループで、23のキャンパスから成る。これに対してカリフォルニア大学(University of California)という別のグループもあって、やはり州立大学10校から構成される。UCLAやUCバークレーは後者のグループに属す。前者よりも後者のほうがレベルは格段に高い。日本では両者が混同されることもある。
18歳で留学した人たちの「その後」
こうして、最初はコミュニティ・カレッジからUCLAに編入するつもりで留学したはずなのに、
(1) 編入のための履修科目の選びかたを知らない
(2) 思いのほかお金がかかる
という2つの大きな理由で、留学を中途で断念してしまうわけです。
最終学歴が、コミュニティ・カレッジ卒、または中退みたいなことになっているのです。
親が大金を払い続けてくれて大学まで卒業できたとしても、コミュニティ・カレッジ卒業までに3年、四年制大学でさらに3年、合計6年以上かかったなどんていうケースも多くあります。
日本の高校を卒業して、18歳でアメリカに留学した人がたくさんいるにもかかわらず、その人たちが、いま、どのように活躍しているのか、なかなか伝わってこないのは、このような事情が背景にあるのです。
国がよくなるということは、普通の人が、いろいろなものを見たり聞いたりするチャンスをもてて、生きることに自信をもって活躍できるようになることです。
せっかく18歳で渡米しても、ほんの最初のつまずきで、将来に活躍する人が出てこないのは、日本にとってもとても残念なことです。
行ってから後悔しないためにも、専門家をご利用ください
当研究所では、参加無料の留学講演会で、留学の注意点や、失敗のケースなどをお伝えしています。
個人別の留学相談では、さらに具体的な学校選びのお手伝いもしていますので、大学を選ぶ前に、専門家の情報を活用していただければと思います。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。