留学生たちの就職事情。ボスキャリでいくつ内定をもらえる?

3日で内定をもらえる就活イベント

ボストンキャリアフォーラムという就活イベントが、毎年秋にバイリンガルの日本人向けに開催されています。

アメリカの大学に留学している日本人にはお馴染みのイベントです。

日本企業に就職したいと考えている人も、ただ興味があるだけの人も、よく面接に行きます。

就職のための試験みたいなものがあるわけではなく、ただ面接して、その場で内定を出してくれます。「3日で内定をもらえる」とよく言われています。

「日本の一流企業が200社くらい来て、その場で内定を出してくれるので、リクルートスーツを着て何か月もウロウロしなくていいので楽ですよ」と就職を心配する人たちに話してもみんなピンときません。

おそらく内心、ウソ、と思っている人も多いのだと思います。

日米の就活の違い

アメリカでアメリカ企業にアメリカ人が就職するときは、メールで願書を出して、1~2日面接して採用が決まります。

企業は必要なときに必要な人材を募集しますので、いつ就職活動を始めるのかは本人の自由で、基本的には大学を卒業して、しばらくしてからそろそろ始めるというのが普通です。

卒業まで勉学が忙しくて、へとへとになるので、一服してからです。

大学在学中に就活をすることはありません。

日本では企業が一斉に同じ時期に採用を始めます。

人気の企業には、あらゆる大学の学生が一斉に申し込んできます。

おそらくすごい数です。

企業側としては、全員と面接するわけにはいきませんから、一斉にテストをしてふるい落とすか、いわゆる偏差値とか学校名とかで切りまくって、人数を減らしてやっと面接ということになります。

そのことが、一流大学に入学できなければいい仕事に就けないという話につながって、中学校受験、小学校受験にまで影響を及ぼしています。

企業は留学生を求めている

ボストンキャリアフォーラムは各企業が、参加費をわざわざ支払ってボストンの会場にブースを設けて、面接をします。

日本人留学生はそんなにたくさんいるわけではありません。

現在アメリカの大学で学んでいる日本人は14,000人程度で、2,800人ほどコミュニティ・カレッジの学生がいますので、この人たちは論外です。

そうすると、11,200人程度を1年生・2年生・3年生・4年生と大学院1年生・2年生で学年を割ると1学年1,800人もいるかどうかです。

4年生でなければいけないということもないので3年生・4年生・大学院生とやってきたとしても5,000人もいないでしょう。

ブースをかまえる企業は、100から多いときは200ほどです。

昨年はAmazon社が3つもブースをかまえたそうですよ。

そうするとせいぜい500人も(2日間です)会えればいいのかしら?

ブースに座っている人たちはわざわざお金をかけてやってきています。

人材確保のためです。手ぶらで帰るわけにもいきません。また、東京の本社に二次面接に来いというわけにもいきません。

内定を出した学生が全員来てくれるということもありません。

アメリカに残ったり大学院に行ったりインターンをしたり他の国に行ったりです。

学生側にいろいろな道の可能性があるのです。

したがって、歩留まりを考えて、なるべくたくさん内定を出すことにします。

「就活で人生が決まる」という幻想

こういう仕組みをキチンと話すと、やっとなるほどと思ってくれるのですが、それでも「大学名は?」と聞いてきます。

そんなハーバードやコロンビアにいっぱい日本人がいるわけでなし、せいぜい一桁で、そういう人たちはたいてい大学院に行ったり博士号をとったり、国連をめざしたりで、あんまり日本企業にそもそも興味は薄いのです。

本当に日本人は、世界でめずらしい日本の就活の方法が頭に刷り込まれていて、そこを起点にすべてを考えます。

でも、それって、どんなにいい就職ができても、入社して30歳くらいで、詐欺みたいなフラット35とかいうローンを組んでマンションを買って、65歳まで働いて、70歳までなんとか働けるけど、給料が3,000万円になったところで半分くらい税金その他にもっていかれて、ほんのちょっとしか贅沢もできず、65歳か70歳くらいから15~25万円くらいの年金で95歳まで生きろ、という日本人のモデルケースにほかなりません。

何もおもしろくないじゃないですか。

人生はもっともっと起伏に富んだ、深い味わいのあるものなのですよ。

当研究所の学生はよくボストンキャリアフォーラムで2社くらいの内定をもらってきますが、また、日本に帰ってきて外資を受けています。

転職もよくしていますね。自分が充実していると思わないと、働きたくないようですよ。

一生の中でチャンスなんていくらでもあるのですから。

日本の就活制度の一番の問題は、「人生にチャンスは一度しかない」と思い込ませることです。

こんなカタンパチンなサラリーマンをつくっても、仕事はおもしろくないけど仕方なく働いている人たちがいっぱいいるという社会になるのです。

どうする日本!!

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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