意外と知らない? アメリカの大学の成績のリアル

なぜアメリカの大学は「卒業がむずかしい」のか?

アメリカ留学の講演会で、参加した人がすごくビックリするのが、アメリカの大学は単位制だということ(今年も、当研究所から留学して2年半で四年制大学を卒業した人がいます)。

理系・文系・芸術系に関係なく、たとえば物理と演劇など2つの分野を専攻してもいいということ。

専攻を決めるのは3年生でもかまわない(願書の、専攻を選ぶ欄に「まだ何をやりたいかわからない」という項目がある)ということ。

「卒業がむずかしい」というのは、2学期続けて70点平均を切ると退学になるという意味であること。

そして、入学するときも、在学中も、卒業するときも、成績が一番大切だということです。

とくに最後の成績については、アメリカ留学はTOEFL®︎テストの点数がすべてと思っている人がとても多く、こちらがビックリするくらいです。

そもそも語学だけということなら、たまたまお父さんが中国人で中国籍で、お母さんが日本人で日本語はよくできるけれど学校の成績はよくない、という人が、東大に日本語能力だけの判断で入学できるということになるではありませんか。

しかも、最近はTOEFL®︎テストの受験のしかたが変わっていて、日本人は慣れていなくて、なかなかよい点数がとれず、費用もすごく高いことからIELTS™️やDuolingo English Testが主流になってきているというのに、相変わらず、留学イコールTOEFL®︎テストと思い込んでいる人がたくさんいます。

ハーバード合格に必要な成績は?

日本人はすぐ、やれハーバードだ、UCLAだと、早稲田や慶應を記念受験するように、簡単に口にしますが、そもそも、ハーバードもUCLAも、入学許可をもらっている人の95%以上は、GPAが3.75以上です。

まぁ、願書を出してくるほとんどの人が、日本でいう、高校の成績オール5というところです。

クラスで1番とか学校で5番以内とかいった人たちです。

入学してからも、やはりGPAが3.5以上とれる可能性のある人たちです。

大学入学後に悪い成績をとると、退学になったり奨学金が止まったり、いろいろと不都合なことが起きます。

就職するときも、成績が悪いとダメです。

いくらハーバード大学を卒業してもGPAが3.0以下だと、アメリカの一流企業にはまず入社できません。

そもそも履歴書の1番上にGPAを書かなければなりません。

日本の人は、つねに大学の名前が大切だと思い込んでいるので、ハーバード卒なのに? と思うかもしれませんが、人間18歳から22歳までの4年間には変化もあるし、そもそも入学のときにラッキーなことがあっただけかもしれないのです。

日本でも、超一流の大学に何割かできない学生がいますし、偏差値が低いといわれる大学にも必ず、できる人間がいるのです。

日本のように、同じ時期に一斉の入社システムですと、人気の会社に(それも時代によって変わるので、ずいぶんいい加減だと思いますが。

いまはマスコミなんて言わないでしょう)すごい数の人が応募してくるので、会社としてはとりあえず人数をさばくためにも偏差値を活用しているはずです。

大人数の能力を同じ時期に見きわめるなんてとてもできません。

アメリカの大学が成績を重視する理由

ChatGPTに、アメリカの大学生がなぜ成績を気にしているか聞いてみたところ、進学・奨学金・就職・就業環境など、さまざまな要因が関係しているとのことです。

以下、ChatGPTの回答によると:

・大学院や専門職大学院(ロースクールやメディカルスクールなど)は、大学でのGPAを重視。ハーバードのロースクールは、入学者の平均GPAは3.9以上、一般のメディカルスクールでもGPA3.7以上が最低基準。

・企業も採用の際にはGPAを重視。投資銀行、コンサルティング、ハイテク企業はGPA3.5以上が一般的な応募基準。一流企業、ゴールドマンサックス、マッキンゼー、グーグルなどは3.7以上が望ましいと言われている。

・有名企業のインターンシップはGPA3.5以上を応募条件としている企業が多く、低いと応募することができない。

・奨学金は一般にGPAが3.5以上の学生が得られる。GPAが高いと卒業のときに優秀卒業生としての称号が得られて履歴書に記載できるので、いろいろな面で有利になる。

等々、いかに成績が重要であるかがよくわかります。

遠征のバスの中でも勉強

UCLAでよく話題になる話があります。

1年生や2年生は大講義室で授業があり、先生の講義の後、20〜30人のグループに分かれて、大学院の博士課程の学生が先生の代わりにTeaching Assistant(TA)としてディスカッションをとりしきって、成績をつけます。

成績が悪かった学生たちは、このTAに「お前が悪い成績をつけたんだろう。どうしてくれるんだ」と文句を言いにきて、埒があかなかったら教授に泣きつきに行くというものです。

また、有名スポーツの花形選手も、GPA2.0を切ると赤シャツを着せられてベンチ入りになるので、スポーツ奨学金やスポーツ特待で入学している学生には、遠征のバスの中でもチューターをつけて勉強させる、という話もあります。

同じ4年間の大学生活が、日本とかなり違います。日本も就活システムや受験システムなど、抜本的に考えないといけない時期に来ていると思いますがねぇ。

どうする日本!!

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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