逮捕者が続出――巨額のお金が動くアメリカの大学スポーツの実態
アメリカの「大学スポーツ」といえばアメリカンフットボールとバスケットボールで、全米が沸き立ちますが、こういう世界にもきな臭い話がいろいろとあります。
大学チームとメーカーのあやしい関係
最近ウワサにのぼっているのは、ケンタッキー州の名門ルイビル大学(University of Louisville)のバスケットボールのコーチがアディダス社からお金をもらって、そのお金で優秀な選手を高校から大学へ引っぱっていたという話です。
なんでも、ある高校生は15万ドル(約1,650万円)受け取ったとか。
もちろん選手はみんなアディダス社のシャツを着てプレーするわけですから、たいへんな広告になります。
このコーチはアメリカでもかなり有名な人で、チームを強くするためにあの手この手を使っていたようですが、ついに大学に4,800万ドル(約53億円)の損害を出し、コーチのみならず大学の学長と理事の全員がクビになったということです。
似たような話はほかにもあって、南カリフォルニア大学(University of Southern California)、アリゾナ大学(University of Arizona)、オーバーン大学(Auburn University)、オハイオ州立大学(Ohio State University)のアシスタントコーチとアディダス社の社員などが逮捕されたというニュースもあります。
アメリカの大学スポーツをとりしきるNCAA
これらの大学はいずれもスポーツの強豪校で、NCAAのDivision Iに属する大学です。
NCAAとはNational Collegiate Athletic Associationの略で、「全米大学体育協会」と訳されます。
大学スポーツに関していろいろなルールを決めたり、その運営を支援したりする全米組織です。
およそ1,200の大学がこの組織に加盟しています。
各大学(あるいはチーム)は、NCAAのDivision I、II、IIIいずれかのグループに属します。
Division Iが最も規模が大きく、レベルが高いグループです。
このレベルになると、選手たちは実力、名声ともにプロ級。試合も全米に放映されます。
NCAAのDivision Iに属している大学は全米に350校ほどあります。
日本人アスリートがアメリカで活躍できるチャンス
当研究所にもアスリートとしてアメリカの大学に留学したいという相談がたくさんあります。
Division Iの大学でプレーしたいという人もいますが、まず太刀打ちできません。
トライアウトの場が設けられ、そういうところへツアーのようにして日本人を連れて行く留学エージェントもあるようですが、トライアウトで目に留まるなんていうのはとてもむずかしいことです。
相当のレベル――たとえばオリンピックに出られるかも――といったくらいであれば、大学のコーチに直接連絡をとることも考えられます。
コーチの力で、入学基準(成績やTOEFL®スコアなど)を下げてくれるかもしれません。といっても、バスケットボールのような種目で日本人が抜きん出るのはむずかしいのです。
Division IIIの大学に入学しても、そこで活躍して州で1番くらいになれば、Division IやDivision IIの大学のトライアウトに挑戦したり、お呼びがかかったりということもあります。
当研究所から留学した人の中では、テニスでそんなケースがありましたが、最初に行った大学ですっかり人気者になってしまい、居心地がよくて他の大学に移る気がしないまま卒業してしまいました。
アメリカのスポーツのシーズン制
さて、アメリカのスポーツが「シーズン制」であることはあまり知られていません。
たとえばアメリカンフットボールは秋のスポーツで、8月末〜1月初旬がそのシーズンです。
野球は春のスポーツで、そのシーズンは2月下旬〜5月下旬です。したがってアメフトの選手でもあり、また野球選手でもある、という学生もいるわけです。
シーズン中の練習時間も週に20時間以内と決まっていて、何時間でも延々と練習を続けるということはできません。
そのうえ成績が悪いと試合に出られませんから、勉強もきちんとしなければなりません。
コーチは選手の成績にも気を配らなければなりませんので、なかなかたいへんです。
アメリカの大学で人気の高いスポーツ種目は、野球、バスケットボール、ソフトボール、フットボール、サッカー、ゴルフ、テニス、陸上、クロスカントリー、アイスホッケー、水泳などです。
いずれもオリンピックでアメリカ選手が活躍する種目です。
日本の大学にもスポーツ推薦がありますが、アメリカの大学のスポーツ熱はそれ以上のようです。
それにしても、コーチを逮捕するとか学長をクビにするとか、そういうことが大っぴらになるのが、やっぱりアメリカですね。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。