留学は人生を左右する一大イベント。間違った情報に振り回されないで
日本の大学からアメリカの大学に編入できない?
アメリカ留学についての私の講演会に参加した人からこんな質問がありました。
どこかのエージェントのアメリカの大学の説明会で、「アメリカの大学の学費が高いので、4年間ではなくて日本で2年間の単位を得てから編入して留学したい」と伝えたところ、「単位の関係でコミュニティ・カレッジが望ましい。早稲田や東大からの編入は厳しい」と言われたのでどうしたらいいか、というものです。
留学エージェントというのは、代理店という名の通り、どこか特定の大学を紹介するのが仕事です。
コミカレを勧めるところからすると、コミカレから四大に編入するという、とくに日本人の好きなカリフォルニア州を想定した話だと思います。
カリフォルニア州に固有の事情
現在、カリフォルニア州のコミュニティ・カレッジで有名なのがOrange Coast Collegeというところで、日本人が200人くらいいるという話ですが、ここの学費が年間約12,000ドルです。
寮のほうはアパートメント・スタイルで、いわゆる普通の大学の寮と違い、また、基本的に留学生ばかりですが、アパート代と食費が年に13,000ドル。
ほかにお小遣いなどもかかりますから、合計で30,000ドルくらいになります。
日本円(1ドル=150円)にするとおよそ450万円です。
また、外国人向けの英語学校があって、英語力の弱い日本人はそこに入学させられるので、1年余分に費用がかかります。
California State University群(たくさんあります)は、コミュニティ・カレッジ以外の大学の単位を認めるのが苦手です。
単位の認否はregistrar’s officeという部署の管轄ですが、いつも忙しくて人手不足で、外国の大学の単位を数えるのもむずかしいので、ハッキリいって面倒くさいのです。
アメリカには、世界の学校の成績や単位をアメリカの大学側がどう見るべきか証明書を出してくれる機関(WESやECEなど)があります。
そこに成績表を提出して、作成してもらった証明書を大学に送ることと、そのコピーを持って、入学後もregistrar’s officeにしつこくかけ合う必要があります。
まだUniversity of California群(UCLAなど)のほうが、きちんと単位を認めてくれる可能性が高いと思います。
まぁこんなことは、世界からの留学生が多く、コミュニティ・カレッジの数が多いカリフォルニア州ならではのことで、それ以外の州の大学は、ごく普通にちゃんと日本の大学(夜間でも通信でも)で文部科学省の認可を受けているところの単位は受け入れてくれます。
アメリカの大学で認められる単位
認められるのは基本的に1・2年の一般教養の単位ですから、アメリカの大学の一般教養に近いクラスの単位を取得する必要があります。
くだんのエージェントは、自分たちが紹介している大学の内容もあまり詳しく知らないと思います。
どの大学にも「スクールカタログ」という大学のすべてのことが書いてあるものがあって、何単位まで他校の大学から認める、ということも書いてあります。
そしていまや、各大学のスクールカタログはオンラインで読むことが可能です。
このエージェントのスタッフはおそらくそれを読んでおらず、ただただ商品を紹介しているに過ぎないと思いますが、人の人生にかかわることで、このような間違った情報(日本の大学からの編入はむずかしい云々)を広げるのは困ったものです。
期間工+放送大学で留学資金を捻出
ちょうど同じころ、1年半ほど前に当研究所でカウンセリングを受けた学生がお母さんと訪ねてきました。
彼女は19歳で、高校卒業後、日本の自動車会社で期間工として働きながら放送大学の授業を受けています。
1学期めは失敗して10単位しかとれず、2学期めの現在、24単位ぶんの授業を勉強中とのこと。
この後どういう単位をとればいいかという相談と、私から元気をもらいに来た、ということでした。
期間工は私が奨めているもので、18歳の人でもちゃんと寮に入れてきちんと食べさせてくれて、安全・健康にも万全の配慮をしてくれる上に、1か月に少なくとも25万円貯金ができます。
短期で大きなお金をつくれる方法としては、日本で最も優れたものだと思います。
彼女も、もうすでに200万円貯めているとのこと。
だいたい4か月がんばると貯金通帳に100万円と出てきますから、やった! という気になるのです。
それに放送大学ですと60単位取得するのに40万円くらいで済みます。
放送大学で60単位取得してアメリカの大学の3年生に編入する予定で、3年次の1年ぶんとして500万円を本人が貯めるつもりです。
お母さんは、残りの500万円をなんとかしようと奮闘中です。
「どうして日本の大学に行かないのかとか、工場で働かせるなんてかわいそうにどうかしてるとか、周りや学校の先生からも言われました。でも、本人ががんばっているのでとてもよかった。工場の生活もイヤではないようで、これだけがんばれるのなら、アメリカに行ってもがんばれると思います。親1人子1人なので、栄先生の言うことを信じてやってきたと思いますが、ちょっとくじけそうになったので、また会いに来ました」とのお話で、私もお母さんも目がウルウルでした。
ベトナムやネパールの若者が自国の工場でがんばってもこんなにお金は貯まりません。
日本はまだ経済大国ではあるのです。
毎年、期間工をしながら放送大学を受けて留学する人が何人かいます。がんばれ日本! です。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。