強いアメリカを演出。トランプ氏とバンス氏のコンビに熱狂するアメリカ人
まさにトランプ劇場
トランプ劇場が沸騰しています。
顔を血に染めたトランプ氏がこぶしを振り上げ、その上には星条旗、そしてその写真を撮った人がピューリッツァー賞受賞の記者、と、まさに偶然に偶然が重なった一瞬。
https://www.cnn.co.jp/photo/35221471.html
その写真をプリントしたTシャツまで、早々と売りに出されているという話です。
事実は小説よりも奇なりといいますが、まさにその通りの展開。
銃規制反対のトランプ氏が、銃に撃たれても不死身の男を身をもって体現したおかげで、英雄伝説まで生まれる始末。
また、その翌日に副大統領にバンス氏を指名する、というこれまた劇的ストーリーです。
バンス上院議員とは何者か?
バンス氏といえば『ヒルビリー・エレジー』の作者としてお馴染みの、アメリカンドリームを達成した人であり、アメリカのラストベルトの出身者です。
移民の国アメリカは新しく移民してくる人ほど、前に来た人たちに多くを取られてしまって、どんどん条件が悪くなるわけです。
バンス氏のお祖父さんお祖母さんは、まさに自給自足を迫られるくらいの貧乏でした。
ちょうどバンス氏の親の頃から、何もない田舎に、自動車や鉄鋼などの工場がどんどん建設され、その周りに労働者のための住宅が建てられ、住宅ローンの仕組みもでき、どんどん工場の城下町ができて、山あいの田舎から引っ越していったものです。
私がアメリカにいた1970年あたりは、ブルーカラーの労働者がとてもよい収入を得て、また、たっぷりとした年金もあって、55歳で定年して、ハーレーダビッドソンを買ってアメリカを旅するなんてかっこいいおじさんがもてはやされていたものです。
取り残されたブルーカラーたち
それが、いつの間にか工場は、中国などに移り、企業城下町はさびれていきました。
ブルーカラーの白人男性が、どんどん取り残されていったのです。
バンス氏もその仲間になりかねない環境にいたのですが、優秀で、飛び級をして、Yale UniversityのLaw Schoolに入学し、法律家になりました。
私は、彼が上院議員になっていたのをなぜか知りませんでしたが、まさにいつの間にやらですよ。
『ヒルビリー・エレジー』は映画にもなって大変ヒットしましたから(いまでもNetflixで見ることができます)、名前は売れていたでしょう。
Black Lives Matter.とか、#Me too.とか、LGBT+とか、ともかく黒人を守れ、女性を守れ、性的マイノリティを守れ、と世間は騒ぎますが、そのはざまで一番割りを食っているのは、俺たち白人男性じゃないか、とバンス氏の昔の仲間たちは考えているのです。
いまどきRed Neckなんていったら怒られるかもしれませんが、アメリカの議会へ乱入した人たちの多くは、首が真っ赤に日焼けするまで働く肉体労働者の人たちです。
バンス氏はそういう階層の人たちから、1人抜きん出てエリート階級に入った人です。
いわば希望の星です。
アメリカは強い男を求めている?
トランプ氏は、昔からニューヨーク社交界のまさに中心人物。
若い頃のタキシードを着たトランプさんを見たら、ほんとにハンサムで、裕福な家庭の出身であることを思わせます。
大学もアイビーリーグです。
いつの間にかレスリングのおじさんみたいになって、白か黒かをハッキリ声高に言うようになって、エリートじゃない白人男性の味方、みたいになっています。
へなちょこの青白いエリート白人じゃなくて、首が赤いくらい強いアメリカ人。
アメリカを強く支えてきたアメリカ人。でもトランプさんの家族はエリート集団です。
いまの奥さんのメラニアさんだけはスロヴァキア出身。
彼女のお父さんお母さんはトランプさんが大統領のとき、こっそりかどうか知りませんが、アメリカ国籍をもらっています。
そこで今回、ますます強い男を強調したトランプ氏に加えて、まさに強い男性集団からやってきたバンス氏。
これで、いまの自分の境遇に不満をもっている白人男性たちが盛り上がらないはずはありません。
女性陣も強い男が好きな人は多いですよ。
なにかハリウッド全盛時代の映画を見ているようなアメリカの大統領選。
ひるがえって日本を見てみるに、相変わらず、政治と金、政治改革と叫んでいて、その割には、力強い男は、ほとんど出てきませんね。
今回は、教育の話が1つもありませんでした。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。