寄付と慈善、お金に対する考えかた。日本とアメリカでは大違い
世界「人助けランキング」衝撃の順位
チャリティーズ・エイド・ファウンデーション(CAF)という団体が毎年World Giving Index(世界人助け指数)を発表していて、最近の発表では、2023年度、日本は142か国中139位だとされています(アメリカは5位)。
これは、この1年間に「見知らぬ人、または助けを必要としている人を助けたか」「慈善団体に寄付をしたか」「ボランティアをしたか」の3つの項目についてインタビューで答えるものです。
日本は毎年、最下位あたりの常連です。
寄付金を基金として研究のために運用
別のニュースで、アメリカの大学にある「チェア・プロフェッサー」という特別な肩書きについて、日本人の教授がその名誉を与えられることになったということが出ていました。
寄付が日常生活のごく普通の風景としてとらえられているアメリカでは、じつにさまざまな寄付の方法があります。
チェア・プロフェッサーは、優秀な研究をしている大学教授に対して、大学側が各方面から寄付を募り、その基金を大学が運用して、毎年の運用益を教授が受け取り、研究に使えるというものです。
寄付を集めて、それを使うのではなくて、運用してその運用益を使うというのは、アメリカらしいやりかたで、元本はずっともっていられるわけですから、一度集めたら、長期間、寄付が続けられることになります。
最近は、日本でも博物館など運営費が不足で、クラウドファンディングなどで寄付を集めていると、ときどき聞きますが、一定の額を集めたらそれで終わりで、一息ついたというかたちで締めくくられるようです。
もっとどんどん集められるだけ集めて、溜め込んで運用するというかたちにすれば、今後しばらく困らないと思うのですが、そうすると相当な額を集めなければならないわけで、あまり大きな額を集めると、かえって反発を招くとか、あるいは、そもそもそんな大金を集められないとか、ということでしょうか。
どこかで日本人がもっている、「お金は汚いもの」という考えかたの臭いがしないではありません。
アメリカ人のボランティア精神
アメリカ人の寄付行動やボランティア精神はすさまじいものがあって、私の友人なんかは、小切手帳を前にばんばんサインをして、あちこちに寄付していましたが、自分の母校に1ドルと書いていました。
「たった1ドル寄付するだけ?」と私は驚きましたが、「今回は1ドルだけ、全然問題ない」と言っていましたから、まぁちゃんと、いつも寄付するということが大事だと思っているということがわかりました。
私たち日本人は、寄付するときも、相手がどう思うかとか、多いか少ないか、などごちゃごちゃ考えることがありますか、そんなことより、行動することが大事なわけです。
不法移民に寛容なサンクチュアリ・シティ
現在、ニューヨーク市は難民の受け入れでパンクしそうです。
ニューヨーク市は、サンクチュアリ・シティと呼ばれていて、不法移民にも寛容な政策をとって、強制送還したりすることなく、医療も含めてさまざまな公的サービスを提供する市です。
サンフランシスコやシカゴ、ロサンゼルスなどもそうです。
アメリカへの移民流入は、ついに2022年度に100万人を突破しました。メキシコとの間にあるリオグランデ川を渡って入ってくる移民は後を絶ちません。
その中には中南米の人たちだけでなく、中国やロシアの人もいるのですよ。
アメリカの南のほうに到達した人たちは、サンクチュアリ・シティをめざします。
最近は、フロリダなどからバスでニューヨークに送りつけられたりするのです。
ニューヨーク市は悲鳴をあげています。
それでもなんとか助けようとするのです。
ニューヨーク市の人たちは、帰れとか帰せとかデモはしません。
アメリカには移民・難民・不法移民と多様な人がいるのです。
医療従事者(医師、看護師など)で、こういう人たちを相手にボランティアをする人もたくさんいます。
なぜ日本人は見知らぬ人を助けないのか?
日本は何もないですね。
年末に貧しい人への炊き出しがあって、ちょっとニュースになるくらいですかね。
さっき話したクラウドファンディングも1回切りで終わりです。
ウクライナやイスラエルのことも騒いでいるのはマスコミだけで、一般には遠い話です。
それより、どこの塾に行くのか、どこを受験するのか、どんな会社に入社できるのか、というのが、親にも子どもにも一番の関心事です。
最近は小学校2年生あたりから塾に行くのだそうです。
サラリーマンになるためだけの教育目標を与えられ、定年後も20年・30年と生きなければならない人生を、どのように有意義に生きるのか、まったく教えられません。
すごろくのあがりが、就職あたりで終わりなのです。
いや、違った。
タワーマンションに入居できるか、あたりかな?
うわべの平等と、本音のすさまじい競争心。
それもとても小さい世界の中の競争です。
でも、若い人たちは「それで何か?」と思っています。
寄付とかボランティアなんて遠い話です。
どうする日本?
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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。