アメリカの大学に合格するためにボランティア? その発想の大きな間違い
高校生になってボランティアを始めても手遅れ
ボランティアや課外活動をするために、現在通っている高校をやめて通信制の高校に通ったほうがよいかという質問がありました。
現在通っている高校は進学校で勉強が忙しく、他のことができないとのことです。
高校生になって、日本の大学ではなくアメリカの大学を志すことになると、あちこちから課外活動やボランティアが必要という情報が入ってきて、慌てる人たちがいますが、ハッキリいってもう遅いのです。
アメリカはもともとボランティアの国です。
会社の社長をしているお父さんが日曜日には教会のバスを運転していたりします。
キリスト教の国ですから、小さいときからボランティアの機会が至るところにあるのです。
したがって、成長していく自然な流れの中でボランティア精神が育まれていくので、大学に合格するためにボランティアをするということはありません。
ハーバードが欲しくない学生とは
アメリカはどんな大学にもAdmissions Officeという入学許可を司る部署があり、専任の人が10人くらいいます。
ハーバードあたりでは40人くらいいます。
教授が兼任するなんてことはありません。まったく専任で従事しています。
この人たちはプロですから、高校生になってちょっとボランティアをしても、何かちぐはぐでバレバレです。
そもそもハーバード大学に入学したいがためにこれだけボランティアをしたとか課外活動をしたとかいうような学生は、ハーバードは欲しくないのです。
何よりも大切な学校の成績
どの大学も、入学基準で最も大切なのは高校の成績です。
ハーバード大学などは年によっても違いますが、入学生の95%くらいが、高校時代のGPA(成績平均値)が3.75以上というのが普通です。
要は日本の5段階でいうとオール5ということです。
日本では大学受験に日本の高校の成績はあまり関係ないようですが、アメリカはすべてにおいて成績が重要になります。
大学に入学してからも成績がよいことが一番重要です。
ハーバード大学でGPAが2.5なんてことになると、周りからおかしい人と思われます。
勉強するために大学に入学したのに、勉強しないということは考えられないのです。
成績が悪くなると奨学金が止まったり退学になったりしますし、就職や大学院に進学するのもとてもむずかしくなります。
学生は必死で勉強するのです。
アメリカの大学の合格基準
アメリカの大学(とくに私立大学)は、リーダー養成が目的ですから、入学希望者が将来リーダーになるために、高校でどれくらい勉強したかを問うてきます。
この指標が成績です。
また、どんな社会貢献を考えてどんな行動をとってきたかを問います。
これが課外活動やボランティアなどです。
周りの人が入学希望者をどのように見ているか、これが推薦状です。
面接も必要です。
その上で、大学に入学して他の学生によい影響を与える学生がほしいというのが基本ですから、出願するほうは、勉学だけでなく音楽やスポーツなどでも、得意なものがあれば大いにアピールするべきです。
こういう多岐にわたる面から学生を選んでいくのがAdmissions Officeの仕事です。
付け焼き刃のボランティアなどは見破られてしまいますから、日本の高校生はあきらめたほうがいいのです。
州立大学は公平・平等をモットーとしているので、私立ほど課外活動やボランティアなどを重視するわけではありませんが、それでもUCLAなど州内でトップクラスになれば、その人の個人の魅力、どのように人を惹きつける能力があるのか、どのように将来、社会に役に立つ能力があるのか、といったようなことをエッセーや推薦状を通して考慮したいと考えています。
ボランティアよりも大切なこと
そもそも日本では、社会からも学校からも家庭からも、社会貢献を求められることはほとんどありません。
教育熱心な家庭ほど、進学校ほど、偏差値を上げることが一番大切だと教えているのですから。
ボランティアや課外活動をしていなくても、おしまいではありません。
まずいい成績をとること。
そして小さいときから習っていたピアノやバイオリンなどがあれば、受験のためにそれをやめるのではなくずっと続けること。
スポーツもずっと続けること。
学校の生徒会や学級委員などでもいいと思います。
要は、人間として自分にはどんな魅力があるのかを考え、それを磨き上げていくことが大切なのです。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。