アメリカの大学に留学する際に迷うのが「志望校選び」。というのも、アメリカには 4,000以上もの大学があり、それぞれの大学がそれぞれの特徴をいかして、個性的な教育を行い、個性的なキャンパスをつくりあげているからです。この多様性は、アメリカの大学の大きな魅力であり、またアメリカ留学ならではのメリットでもあります。
このページでは、そんな個性豊かなアメリカの大学を、日本人にとっての学びやすさと、学力・知名度の観点からいくつかのグループに分けて、それぞれの特徴を紹介します。留学先の大学を選ぶ前に、それぞれのグループの特徴をつかんでおきましょう。
リベラルアーツ・カレッジ
リベラルアーツ・カレッジは、小規模の四年制私立大学です。全米に650校ほどあります。
リベラルアーツ・カレッジの教育モットーは、幅広くさまざまな分野を学び、バランスのとれた人間としての土台を築くこと。専門性の高い分野を学ぶよりも、まず自分の将来の生きかたを模索し、その基礎をしっかりつくろうという教育です。
リベラルアーツ・カレッジは規模が小さく、学生数はだいたい 1,000~2,000人くらいで、3,000人を超えることはめったにありません。アットホームでフレンドリーなキャンパスを築き上げています。
1クラスの学生数も 10~20人程度。先生がたはとても親切で接しやすく、わからないことや悩みごとがあったときは、いつでも相談にのってもらえます。
また、リベラルアーツ・カレッジの多くは、豊かな自然に抱かれた美しいキャンパスをかまえています。学生たちはそこで寮生活を送ります。高校を卒業して親ばなれし、自分の力で考え、決断する力・自立する力を養います。寮生活では協調性やコミュニケーション力も磨かれます。
リーダーシップをはぐくむこともリベラルアーツ・カレッジが力を入れていることの1つです。卒業生たちは、政治・経済・文化・スポーツ・科学・教育など、さまざまな分野で先頭に立って活躍しています。
規模が小さいというのは、日本から留学する人にとっては大きなメリットになります。リベラルアーツ・カレッジの先生たちはとても親切で、英語のハンデを抱える留学生にも、優しくていねいに接してくれます。
学生たちは寮生活を送りますから、友だちもつくりやすく、キャンパスの一員としてすぐに溶け込めます。「学びやすさ」でいえば、リベラルアーツ・カレッジは一番です。
日本での知名度はそれほど高くありませんが、ウィリアムズ・カレッジやアマースト・カレッジ、スワースモア・カレッジなどは名門リベラルアーツ・カレッジとしてアイビーリーグに匹敵する教育レベルを誇っています。総じて教育環境はよく整っています。
難関総合大学(州立&私立)
ハーバード大学やUCLA、スタンフォード大学など、日本の人にもお馴染みの名門大学です。リベラルアーツ・カレッジとの違いは、これらの大学は複数の学部(SchoolとかCollegeと呼ばれます)を抱え、ビジネススクールやメディカルスクール、ロースクールなど大学院の課程を充実させている点です。必然的に規模が大きくなります。
日本で「アメリカの名門大学」といえばこのグループに入る大学群です。知名度が高いために、こうした大学に留学したいという人もたくさんいます。でも、難関ぞろいですから、なかなか合格を勝ちとるのはむずかしいというのが実情です。世界中から願書が寄せられる大学です。優秀な人たち同士の熾烈な競争になります。
学びやすさという観点からすると、リベラルアーツ・カレッジに比べると規模が大きいだけに、慣れるまでがやや大変です。学生たちも自律してどんどんすべきことをしていきますから、取り残されがちにもなります。また、とくに規模の大きな大学では、大学1、2年生の講義は大きな講堂で行われることが多く、親身な指導とサポートを得られにくいこともあります。
このグループに属する名門大学は、大学1年から行くよりも、大学院から狙うほうが、合格の可能性も高まり、求める教育を得られるかもしれません。
中堅総合大学(州立&私立)
このグループに属する総合大学は、とくに州立の場合は地域密着型です。そのエリアに住む人たちを対象として、地域の教育振興と人材育成の役目を果たしています。名門大学に行くには学力が不足しているけれど、かといって勉強に不熱心というわけではない、ごく普通の子たちがめざす大学です。学費も、その州に住んでいる人であればけっこう安くなります。
教育内容としては、リベラルアーツ・カレッジに比べルト、「実学」(工学や農学、看護学など)に力を入れています。手に職をつけることも、これらの大学の大きな役割です。
こうした地域密着型の総合大学の中には、マンモス大学と呼ぶにふさわしい大学もあります。4万人の学生が学ぶオハイオ州立大学や6万人以上の学生を抱えるアリゾナ州立大学などがそうです。こうした大学は、総じてスポーツが盛んで、施設もプロ並みのものを備えています。パーティ大学として有名な大学(フロリダ州立大学など)も、だいたいこのグループに入ります。
日本人留学生にとっての学びやすさという観点からすると、やはり規模の大きさがネックになります。学生たちも地元の人がほとんどなので、溶け込むのに苦労しそうです。授業も大講堂で行われがちで、ていねいな学習サポートもなかなか得られません。
コミュニティ・カレッジ
コミュニティ・カレッジ(Community College)は、二年制の公立大学です。全米に1,100校ほどあります。
コミュニティ・カレッジは、その名の通り、おもにその地域(コミュニティ)の住民のための教育を行っています。「望めばだれでも学べる」というポリシーがあるので、入学審査は基本的に行われません。その地域に住んでいれば、無審査で合格できます。したがってレベルが高いコミュニティ・カレッジというものはありません。
職業訓練に力を入れているのもコミュニティ・カレッジの大きな特徴です。自動車整備士や土木工、電気技師、看護師など、さまざまな職種の基本的な技術を教えています。そうすることで地域の雇用促進に貢献しているのです。カルチャースクールのような側面もあります。
コミュニティ・カレッジの大きな魅力は、なんといっても学費が安いこと。地域住民であれば年間4,000~5,000ドルほどで学べます。留学生でも、年間の学費は 10,000ドルくらいです。留学生に奨学金は出してくれませんが、それでも 四年制大学に比べるとずいぶん安くなります。
コミュニティ・カレッジは規模が小さいところが多く、学生数はだいたい 1,000~3,000人です。在学生のほぼすべてが地域住民ですので、ほとんどのコミュニティ・カレッジでは寮を設けていません。みんな自宅から車で通っています。
また、働きながら学んでいる人が多いのも、コミュニティ・カレッジの特徴です。コミュニティ・カレッジの学生の平均年齢は 29歳といわれています。日本の高校を卒業してそのままコミュニティ・カレッジに留学すると、ちょっと違和感を覚えることになるかもしれません。